フランチャイズにおけるドミナント戦略とは?
店舗を構えてビジネスをおこなう場合、出店するエリアは収益を左右する重要なポイントになります。フランチャイズであれば複数の店舗を出店できるため、地域によって分散させたり集中させたりして各エリアに最適な出店方法を選択する必要があります。
効率的にシェア獲得を目指せる出店戦略の一つが「ドミナント戦略」です。ドミナント戦略は、一つのエリアに複数の店舗を出店させる方法で、コンビニのフランチャイズでよく採用されています。この記事では、フランチャイズにおけるドミナント戦略について解説します。
目次
1.ドミナント戦略とは?
1-1.フランチャイズにおけるドミナント戦略とは?
ドミナントには支配的や優勢なといった意味があり、フランチャイズにおけるドミナント戦略とは、地域の市場を獲得するための店舗出店戦略の一つとして知られています。具体的には、ひとつの地域に集中して複数の店舗を出店することで、効率的に認知を広げ、シェアを獲得していきます。
コンビニやドラッグストアなどの出店戦略によく利用される手法で、道の向かいに同じコンビニやドラッグストアが並んでいる光景を目にしたことがある方も多いのではないでしょうか。フランチャイズでドミナント戦略を成功させるには、出店する地域を綿密に調査する必要があります。なぜなら、ドミナント戦略は地域の市場獲得を目指す手法ではありますが、そもそもお客さんのいない場所に複数店舗を出したとしても十分な効果を得ることはできないからです。
複数店舗の出店に失敗すれば、大きなコストがかかってしまいます。ドミナント戦略を実施するエリアとしては、今後開発が進む市街化区域である、新路線の開通が予定されている、大型モールが建設中など、人口が増えることが予想される地域であることが重要です。また、扱う商材によってはターゲットとなる年齢や性別が限定されますし、提供するサービスに適した家族構成の人々が今後増えていくのかどうかも事前に調べる必要があります。自治体が公表している人口動態のデータや地域開発計画の資料も参考にしながら、出店予定地域の調査を実施します。
2.ドミナント戦略のメリットとは?
2-1.競合他社の参入を防げる
ドミナント戦略を実施することで獲得できるメリットは、競合他社の参入を防ぎ、ビジネスを優位に進めることができる点にあります。競合の参入を防ぐことができる理由としては、一度シェアが獲得されてしまうと、その市場を奪うのが難しくなるからです。
例えば、地域住民の人に「ピザなら○○○ショップ」と印象づけることができていれば、他店が出店をしたとしても、○○○ショップに慣れているから、子どもたちが○○○ショップのピザが好きだからといった心情が生まれやすくなります。消費者の心を早めにつかみ、他社の参入障壁が高くなれば、地域での優位性をさらに増すことができます。
2-2.顧客の取りこぼしを回避できる
1店舗だけでは物理的に全てのお客さんに対応できない事態が発生しますが、複数店舗を特定のエリアに集中して出店することで、顧客の取りこぼしを回避することにもつながります。競合に対して参入障壁を高めるためには、獲得できる顧客の存在に気づかれてはいけません。見込み顧客も含めてしっかりと店舗をアピールし、売上の最大化を目指します。
2-3.周辺エリアへの認知向上
複数の店舗をひとつの地域に集中して出店することで、地域住民の目に何度も触れられるようになるため、周辺エリアでの認知度の向上につながります。当然ながら、知らないお店よりも知っているお店の方が入りやすいため、後から競合店が出てきても自然と自店舗に足が向く可能性が高くなります。
消費者の信頼を獲得できれば、売上アップにつながる可能性は飛躍的に向上します。ドミナント戦略は、地域密着型の店舗を目指すビジネスにマッチした戦略といえます。また、認知度が向上することで、地域に合わせた広告宣伝を実施する際のパフォーマンスがよくなります。すでに知っているお店の広告であれば目に留まりやすくなるからです。店舗が固まっているエリアに共同で広告を出せるため、宣伝コストの節約にもつながります。
2-4.コストを最小限にできる
ドミナント戦略により複数の店舗が近距離にあると、配送の手間がかからず移動時間が短くなるため、配送効率の向上によりコストを最小限に抑えることができます。また、横のつながりが強固であれば、店舗同士での商品の受け渡しや人員を共有することも可能になるため、供給過多や商品不足のない効率的な店舗運営につながります。
さらに、店舗同士の距離が近いため、本部のサポート役であるスーパーバイザーの移動時間を短縮でき、その分を店舗へのサポートに当てることができるようになります。
3.ドミナント戦略のデメリットとは?
3-1.周辺エリアで顧客の取り合い
複数店舗を集中的に出店することで顧客の取りこぼしを防ぐことができるドミナント戦略ですが、出店する店舗同士に十分な距離がないと、顧客を奪い合うことになりカニバリゼーションを発生させてしまいます。
カニバリゼーションとは共食いという意味があるのですが、ビジネスでは顧客や収益の奪い合いを表現するワードとして利用されています。顧客の取りこぼしを防ぐのではなく、利用店舗の切り替えに留まり相乗効果が生まれず、先に出店していたお店の売上が下がってしまう事態が発生します。地域内に出店店舗を集中させるといっても、事前に市場調査をおこない、適度な距離を保つ必要があります。
3-2.災害時のリスク不安
ドミナント戦略では同じ地域に複数の店舗を固めて出店しているため、相乗効果で利益を最大化できるメリットがありますが、災害が発生してしまうと、同時に複数の店舗が被害に遭うリスクがあります。大きい利益を獲得するには、同時に大きなリスクを背負うことにもなるのです。
災害のリスクをできるだけ最小限に抑えるために、自治体が公表しているハザードマップなども出店の際に参考にするとよいでしょう。
3-3.エリア内での需要の変化
限られた地域に出店を集中させている分、地域の変化の影響を受けやすい点がデメリットとなります。出店時に地域調査をおこないますが、年数が経てば地域の様子も変化します。開発が進むなど、良い変化であればその恩恵を受けられますが、逆の場合もあります。
何らかの理由による市街化工事の遅延、ショッピングモールの撤退、インフラ整備が進まないことによる人口減少など、マイナスの変化が起きればその影響は店舗の売上減少につながります。ドミナント戦略は地域の変化によって売上が大きく左右されますので、良い面と悪い面の両方を考慮したうえで出店戦略を検討する必要があります。
4.ドミナント戦略での出店エリア選択方法
ドミナント戦略を実施するエリアを決める際は、ターゲット調査・商圏調査・競合調査をおこない、適切な店舗配置を検討する必要があります。まずは顧客となる人物像を明確にし、そのような人が集まるエリアの見当をつけていきます。若い女性がターゲットなら繁華街、車を所有する家族向けなら幹線道路沿いなど、ターゲットによって検討するエリアが異なります。
エリアの候補が決まったら、それぞれのエリアが集客を見込めるかどうかの商圏調査をおこないます。徒歩10分以内の人口、昼夜の人口動態の違い、年代別などの人口構成比などを調べ、見込み客となりそうな人が出店を検討している場所で実際に活動しているかを調査します。
最後に競合調査を実施し、ターゲットとする顧客がすでにそのエリアで購買活動をしているのかを確認します。競合が提供している商品やサービスの価格帯が自社のビジネスに相違なければ、ドミナント戦略での勝機を見出せるはずです。
5.まとめ
フランチャイズのドミナント戦略について解説しました。人口の増加が見込まれ、ブランドのターゲットに該当する人々が住むエリアであれば、同一地域に複数の店舗を出店させるドミナント戦略が有効です。地域住民の認知度を向上させることで、地域の市場を獲得し優位にビジネスを展開できるようになります。失敗したときのダメージは大きいですが、成功したときのリターンを考えれば、リスクを背負う価値のある戦略といえるでしょう。