フランチャイズに必要な開業資金相場とは?資金調達方法と合わせて解説
フランチャイズの開業で最も気になることの一つは、いくらあればビジネスをスタートできるのかという点ではないでしょうか。業種によっては1,000万円以上の資金を必要とするフランチャイズビジネスもありますが、実際に開業したオーナーたちは、500万円未満で始める人が大半を占めています。開業資金ゼロで始められるビジネスもありますが、参入障壁が低ければ競合も多くなりますので、ある程度資金を用意しておく方が勝機のあるビジネスを展開することができます。ここでは、フランチャイズの開業資金の相場や調達方法について解説します。
目次
1.フランチャイズオーナーとして必要な開業資金と相場
(1)開業資金の相場
経済産業省の調査によると、フランチャイズ全体の開業資金の平均金額は、加盟店で店舗を用意する場合で約3,200万円という数値が算出されています。数字だけを見るとフランチャイズで独立開業するのは個人には難しそうと思う方が多いかもしれません。しかし、数字は全体の平均値であり、事業主体である法人・個人の区別がありません。
より具体的に業種や業態別に見れば、フランチャイズでの独立開業が全く手の届かないものではないことがわかります。
業種別にご紹介すると、小売業の場合、買取店の開業資金は約500万円〜1,500万円となっています。チケット金券ショップについては約400万円〜1,000万円、コンビニエンスストアについては約200万円〜800万円が開業資金の相場となっています。
ちなみに、上記の数字は開業〜3ヶ月分の運用も含めて想定しています。金額に幅がありますが、売上がすぐに立つようであれば開業に必要な資金は抑えられるはずです。
飲食業界では、ファストフードで開業する場合、必要な資金は約2,000万円〜4,000万円、居酒屋の場合は約1,000万円〜2,000万円、近年増えてきた無店舗型の配達サービスであれば約200万円〜400万円となります。
サービス業については、クリーニング店が約200万円〜1,000万円、学習塾の場合は約500万円〜3,000万円、ハウスクリーニングであれば約50万円〜400万円となっています。もちろん業態によっては数千万円以上の資金が必要なフランチャイズもあります。
(2)加盟者が用意した実際の資金額
フランチャイズに加盟する際に、個人オーナーが実際に準備した資金がどれくらいなのかが気になりますよね。個人のオーナーがフランチャイズ加盟の際に用意した資金で、最も多かった価格帯は300万円以上500万円未満で、全体の2割強にあたります。用意した資金の条件を500万円未満のみにすると、全体の8割のオーナーが該当しますので、フランチャイズで独立開業したほとんどの人が500万円未満の資金で始めているのがわかります。中には開業資金ゼロで始めた人も1割強います。また、1,000万円以上の資金を用意した個人オーナーも同様に1割ほどいます。フランチャイズで独立開業を目指すなら、300万円〜500万円ほどを自己資金として用意するのが現実的な数字となります。
2.開業資金の内訳は?
開業資金の内訳としては、加盟金や保証金、採用人件費、研修費、物件取得費や改装費、その他の費用があります。
(1)加盟金、保証金
加盟金とは、フランチャイズへの加盟を締結した際に、フランチャイズ本部へ支払う費用のことです。フランチャイズ本部へ加盟金を支払うことで、実績のあるブランドの元で事業を開業することができ、認知度の高い商品やサービスの取り扱いや、店舗運営のノウハウによるサポートを受けながらビジネスを進められるようになります。加盟金の金額は企業によって相場も大きく異なりますが、本部への定期支払いが発生するロイヤリティと調整しながら金額が決められるケースが多いです。
加盟金の支払いと同時に保証金の支払いも発生します。保証金とはフランチャイズ本部に預ける一時金のようなもので、店舗を運営する中で本部への支払いが発生した際の補填をする役割があります。フランチャイズ店舗の運営を始めると、本部とのお金のやりとりが頻繁に発生しますが、支払いの遅延などが発生した場合、保証金から差し引くことで支払いを完了させます。保証金から支払いの補填が実施された場合、元の保証金額になるよう加盟店オーナーは追加で入金する必要があります。
(2)採用人件費
フランチャイズに加盟し店舗を運営するために、従業員を雇用する必要があります。人件費はビジネス運営のための経費の中で大きな割合を占める費用です。業界平均でも売上に対して20%〜30%ほどが人件費となっており、オーナーとしてはできるだけ節約したい項目でもあるでしょう。
人件費をおさえる方法としては、クラウドソーシングの活用や各種助成金の活用、人材派遣の活用などがあります。クラウドソーシングとは、ネット上での業務の外注化を意味する言葉です。資料作成やメール対応、サイト作成など、やってほしい作業ごとに費用を支払うことになりますので、人を雇用して教育するよりも安く済みます。
また、労働移動支援助成金や中途採用等支援助成金など、国から支援を受けながら雇用を進めることもできます。採用というとハローワークや有料求人媒体を想像するかもしれませんが、人材派遣を活用することで、複数の媒体に採用を依頼するよりもトータルで見ると費用をおさえられるケースもあります。
(3)研修費
フランチャイズ店舗を開業する前に、業界知識や運営ノウハウを学ぶため、本部による事前研修がおこなわれます。開業前に実施される事前研修にも費用が発生します。企業によって研修費が加盟金に含まれている場合と含まれていない場合がありますので、フランチャイズ契約を結ぶ際に確認しておきましょう。
研修の主な内容としては、店舗運営マニュアルの解説、営業方法や社内システムについての解説、直営店などでの実地研修があります。
店舗運営マニュアルの解説では、開業後もスムーズな店舗運営ができるように、オーナーや従業員向けに店舗運営についての業務ルールを確認してもらいます。営業方法や社内システムについての解説では、開業した後の店舗での接客や本部への発注方法などについて研修をおこないます。提供するサービスの品質をブランドで統一する目的もあり、研修を通してスキルを身につけ顧客満足度の向上を目指します。直営店などでの実地研修では、実践的な環境で学ぶことで、開業した後の応用力などを身につけます。
(4)物件取得費、改装費
物件取得費とは、フランチャイズ店舗となる物件を取得するための費用です。フランチャイズ本部で物件を手配しない場合、自分で営業を開始するための物件探しから始めなくてはなりません。物件を借りる場合は敷金や礼金がかかりますし、不動産業者に支払う仲介手数料なども発生します。
フランチャイズ開業に必要となる資金の中で、大きな割合を占めるのが物件取得費となります。ただし、業種によってはフランチャイズ本部が用意してくれたり、一部負担してくれるケースもありますので、開業前に確認しておきましょう。
また、物件は取得するだけでは営業を開始することはできません。内装・外装の工事を入れる必要があり、工事にかかる費用である改装費が発生します。さらに、飲食店であれば厨房などの設備を導入することになりますし、小売店であれば商品を陳列するための什器などの備品を揃える必要があります。
(5)その他
その他の費用としては、商品の仕入れや本部システムの利用料、店舗のための広告宣伝費などです。小売店であれば販売する商品を、飲食店であれば食材を仕入れるための資金も必要になります。グループで共通の営業管理システムを使用している場合はその利用料なども毎月の費用として発生するでしょう。
また、ブランドの認知を向上させるための広告は本部が担うことになりますが、周辺地域へ店舗の存在をアピールするための広告宣伝はオーナー自ら実施する必要があります。SNSや地図アプリなどを使えば無料での宣伝もできなくはないですが、スピード感をもってビジネスを展開するのなら有料広告の活用は欠かせません。
他にも業種によって細かい費用が発生する可能性はありますので、フランチャイズ本部が実施している説明会なども参考に、開業に必要な費用を把握しておきましょう。
3.開業資金を調達する方法は?
開業資金を全て自己資金でまかなう必要はなく、国の制度や銀行の融資を活用して資金を調達する方法があります。
(1)日本政策金融公庫
1つは、国が出資している金融機関である、日本政策金融公庫を利用する方法です。銀行に比べて融資が受けやすく、低い利率で資金を借り入れることができ、保証人や担保がなくても借りられるといったメリットがあります。
開業資金として利用できる制度としては、新創業融資制度と新規開業資金があります。
新創業融資制度は、新たに開業する人や2期目の決算を終えていない事業者が対象で、最大3,000万円の融資を受けられる制度です。新規開業資金は、新たに事業を始める方や事業開始から7年以内の事業者が対象で、最大7,200万円まで融資を受けることができ、設備資金であれば20年以内、運転資金であれば7年以内の返済期間が定められています。
(2)銀行融資
2つ目は、民間の金融機関である銀行に融資をしてもらい資金を調達する方法です。日本政策金融公庫よりも融資のための審査は厳しいですが、融資金額の制限はなく、フランチャイズ本部のブランドを利用できるため、個人で融資を受けるより有利に手続きを進めることができます。保証協会付融資を利用すれば、協会に保証料を支払うことにはなりますが、協会が保証人となってくれますので、銀行としてはリスクをおさえた融資を実施できます。
(3)補助金、助成金
2つ目は、国の制度である補助金や助成金を利用した資金調達方法です。補助金や助成金を活用する最大のメリットは、返済不要の資金調達方法であることです。その分給付にいたるまでの審査は厳しく、また、補助金の給付は後払いにはなるのですが、資金的な負担をおさえながらビジネスをスタートすることができます。
補助金の例としては、1,000万円規模の補助も受けられるものづくり補助金や販路開拓のために利用できる小規模事業者持続化補助金があります。助成金の例としては、地域の雇用を推し進める企業に給付される地域雇用開発助成金、高齢者や難民、障がい者を雇用する企業に給付される特定求職者雇用開発助成金があります。
フランチャイズで使える補助金について、別記事にてより詳しく解説しています。資金面でのサポートを受けながら開業をご検討の際はぜひ参考にしてみてください。
4.開業資金を調達するために必要なものと手順は?
日本政策金融公庫の新規開業資金へ申請するための必要書類とその手順をご紹介します。
必要書類としては、融資を申請するための借入申込書、創業の動機を示すための創業計画書、法人で申請する場合は履歴事項全部証明書、設備を導入する際はその見積書、不動産を担保にする場合は不動産の登記簿謄本、他にも面談の際には通帳やローンの支払い明細など、申込者の資金状況がわかる資料の提出が求められます。
手順としては、まずは日本政策金融公庫の窓口へ融資相談をおこない必要資料などの確認をおこないます。必要資料を揃えたら、窓口もしくは郵送で融資の申請をします。申請が完了し、書類審査と担当者との面談審査を通過すれば、融資が実行されます。他の資金調達方法でもおおむね近い資料を用意することになりますので、条件などを確認しながら、過不足ないように準備を進めて行きましょう。
5.まとめ
フランチャイズの開業に必要な資金について解説しました。フランチャイズ全体での開業資金は2,000万円〜3,000万円の資金が平均値ではありますが、個人オーナーが準備する金額としては500万円未満の人がほとんどです。ブランドによっては本部が負担する費用などもありますので、加盟する前に支払う必要のある費用について、細かい内訳を確認しておくと良いでしょう。資金の調達には融資や補助金を活用する方法もありますので、本部と資金面の相談をしながら開業に向けた準備を進めるのがおすすめです。